鴨 一

鴨 一
三好達治

二羽 三羽 霧のかかつた水際に 黒い小鴨が游いでゐる
私は林の小徑を出る ――それとなし彼らはくるりと向きをかへる
やがて一羽は空に揚る 一羽は水の面を飛ぶ 一羽はあとに殘される
彼は周章てて水を打つ 水を打つ やつとからだが宙に浮く 仲間と違つた方角へ



青空文庫より引用